2014年3月27日木曜日

【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働

(1)原発再稼働が最終プロセスに入った。

原子力規制委員会は、3月13日、再稼働審査中の10原発のうち、九州電力川内原発(鹿児島県)の審査を優先的に進めることにした。

かくて、この夏の川内原発再稼働がほぼ確実になった。



(2)3年前、東日本大震災直後の2011年春、経済産業省では官僚たちが原発再稼働のための戦略ペーパーを作っていた。その後、新設される「原子力規制委員会」をどのようにして「再稼働のための組織」にするかが大きな課題になるのだが、彼らは実に見事にそれをやり遂げた。

(a)規制委員会の人選を国会ではなく、関西電力大飯原発再稼働を強行した野田内閣が行う仕組みにした。

(b)2年はかかると言われていたのに、日本の原発を動かすための甘い規制基準案をわずか半年で作らせることに成功した。

(c)規制委員会を設立後1年近く再稼働の準備に専念させた。福島第一原発の悪い情報は上げず、関心を逸らした。その結果が汚染水問題の深刻化と事故収束の遅れだ。

(d)これが実は非常に大きいのだが、原発事故の避難対策は規制委員会の仕事ではないことにしてしまった。安倍政権は、規制委員会が規制に適合していると認めた原発は、地元がよいと言えば再稼働させる、という立場だ。その結果、避難対策には規制委員会も政府も責任を持たず、地元自治体に丸投げされることになった。地元自治体は、再稼働最優先のところがほとんどだ。まともな避難対策はできない。つまり、日本では、過酷な事故で放射能が検出されると想定しながら、それから逃げるための避難対策が著しく不十分なまま原発を動かすことができるようになった。



(3)ある民間の研究所が行った原発ごとの試算では、避難に必要な時間が8〜63時間だった。

試算がある自治体の数字とも符合する。

ちなみに、試算の前提は「すべての道路が壊れていないこと」だった。大地震では道路は寸断される。

しかも、大雪、台風、さらに逃げ遅れたお年寄りや病人を高濃度汚染されている地域に誰が行って、どう助けるか、なども「想定外」のままだ。実際の避難には、数十時間から100時間以上かかるだろう。



(4)メルトダウンは2時間で起きる。

規制委員会はフィルタベント(原発事故時に蒸気を、放射性物質を低減してから外部に逃がす装置)の設置を義務づけているが、放出される放射能濃度は人体に有害なレベルでもよいことになっている。ここから帰結されるのは、事故が起こると多数の住民が深刻な放射能被曝に合う、ということだ。

逆に言えば、避難対策をきちんとやれ、と言うと、日本の原発はすべて再稼働できなくなる。

だから、規制委員会は避難対策を無視することにした。

田中俊一・規制委員会委員長は、廣瀬直己・東京電力社長には会うが、泉田裕彦・新潟県知事の面会要求を拒否している。泉田知事の避難対策に係る質問に答える能力がないからだ。



(5)規制委員会は、安全でないのに安全だと見せかけて再稼働につなげる、という難しい任務を背負わされている。

自民党の原子力ムラの議員や経産相らから「早く審査しろ」と圧力がかかる。

安部首相らが、原発が止まって化石燃料輸入増で貿易赤字になった、と喧伝する。

全部規制委員会の責任だ(と原子力ムラは言う)。



(6)規制委員会も政府に反撃するがよい。

<例>電力会社に損害賠償保険への加入を義務づけるよう経産省に勧告する。

誰も保険を受けなければ、安部のお得意の経団連へ要請してもらえばよい。安全だというのだから、経団連企業が引き受けるだろう。



□古賀茂明「「避難計画」なき原発再稼働 〜官々愕々第103回〜」(「週刊現代」2014年4月5日号)

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【参考】

【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 〜東日本大震災3年〜







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2014年3月15日土曜日

騙されてはいけない963―今起こっている福島原発事故・「堰の二重化工事の遅れと、排水出口の港内付け替え!?」


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放射線被曝の誤解-国民は健康と命、政治家は金勘定

「最後は結局はお金でしょ」。原子力安全委員会・委員長の言ったことは原子力産業の本質的な矛盾をついている。彼は正しい。※この記事以外のコンテンツは有料メルマガで。初回月(毎月1日からその月の末日まで)は無料です。



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