2010年10月2日土曜日

樋口健二氏講演「ヒバク~放射能の恐怖」(5)労働者が手作業で放射能を拭き取る

マスコミは今、大変ですから。広告料がなかったら自分たちの給料がでないんだから。そういうところに首を突っ込みたくないんですよ。みんな金ですよ。

 原発に、そういう連中がみんな巣くってて、とんでもないことが起きてることをみんな知らない。これは私が勝手に作った問題じゃないですよ。

 さっきの高校生、普通の労働者の5倍被曝して、それで一人が稼いだのが100万円くらい。で、みんなピンはねされてた。それで暴力団がやっていることが分かってきたんですよ。

 暴力団の親方は、人間をもっと連れて来い、もっと連れて来いってあおっている。そりゃあもっとつれて来いって言いますよね。2万円を毎日ピンはねしてたらいいんだから。自分は、「どこどこに何人ですね、わかりました」って言って人を突っ込んでいればいいんだから。今でも同じですよ。

 ついでに下請け労働者の作業内容も言って、本題に入っておしまいとします。それは、放射能の除洗作業です。ボロ雑巾で何もない床を拭くだけなんですよ。皆さん、想像してみてください。



 僕のこの写真がスクープになったんですよね。撮っちゃいけないところで撮ったんですよ。誓約書を破って撮った写真です。そうしなきゃね、マスコミなんてみんな記者クラブで、「はい、ここ撮ってください」って言われたところを一人が行って代表撮影するだけ。これじゃあね、何も写せるわけないじゃないですか。

 この写真撮ったとき、中では人海戦術でしたよ。写真には写ってないけど、むこうに3人、こっちに4人横にいるんだけどさ、これを見たとき原発ってのは何のことはない、人が動かしてるんだって思いましたね。ここに行く途中にも通路に、真っ赤な作業服着たマスクをつけた待機要員がはあはあって息苦しいんで肩で息をしてましたよ。凄まじいもんだったけど、写真を撮らせないように誓約書があったから撮らなかったけど。

 放射能の除洗、パイプの補修、パイプの掃除をやるとき、この作業服を毎日捨てたら何万円もするから、毎日、大型洗濯機で洗うんですって。この洗濯機のある部屋が、服についた放射能で、放射能の海みたいなところなんですって。こんな仕事他にある?

 それから、ヘドロ。その辺の家のヘドロ、ちょっと臭いけど、そんなもんはいいんです。死にゃあしない。この原発のヘドロは放射能ヘドロですよ。これをかい出しては核廃棄物処理運搬です。

 機械類の運搬、配電盤施設の点検、補修、サンダーがけ、溶接作業、他、すべての雑役でどのくらいの数になりますかって北九州の親方に聞いたんですよ。そしたら、300種以上にはなるだろうよって。でも俺ら手抜き作業してるから3ヶ月くらいの定期検査でいけるんだよって。手抜きをしてるんだって。そうでしょう、去年の美浜での事故見ればわかるでしょ。パイプが腐ってたのに28年もほったらかしにしてたんだから。ああいうのを手抜きって言うんですよ。

 おそらく、あれはほんとは8月14日に点検に入る予定だったわけでしょう。でも9日だったでしょ、事件が起きたの。あの日、なんであんなとこに入ってたんだろ、210人も。つまり、法律的にはこれから点検に入るにもかかわらず、もう点検をやらしてたんですよ。

 それでたまたま、あの会社の人があのパイプの点検やってたんだろうね、想像すると。だって、作業してるそのままの格好で蒸気にやられたって言ってるんだから。そのまんまで。ひどいね。

 こういう作業だけだって、これをやらなきゃ1日たりとも原発は動かないんだって。ここに労働者はみんな入ってるわけだから、定期検査は、とくに被曝がひどいんだけどさ、日常だってやってるんですよ。

 2003年までの資料しか国は出してきませんが、総労働者数が156万人を突破しました。原発に関わった労働者が四分の一、五分の一と見積もっても、40万人からの被曝者がいるんだって、この国には。で、わずか6例だけど、白血病に対して、労災が下りたんですが、あとの病気は切捨て。

 いや、白血病以外では1例だけです。大阪で裁判が起きてるのをご存知ですか? 長尾光明さんという78歳のおじいさんが四年半くらい、東京電力相手に裁判やってます。7000ミリレムも浴びてたんで労災認定が下りた。生きてるうちに労災認定うけたのはこの人だけです。

 この人が今、裁判を起こしてます。労災は認定されましたけどね、被曝の因果関係を明確にしようというので、大阪で裁判が起きてます。これを支援してやってくださいよ。署名とかね。

 力関係ですからね、裁判なんて。被曝労働者がいないんじゃなくて、いないことにしている体制だけなんだから。ほんとに、この被曝問題をやったらこの国はどうなるんだろう? こんなことほっといていいのか? 原爆だって何十万人ですが、これを超えてきますよ。長崎、広島は40万人ですよ。

 今朝のTBSラジオで女性評論家が言ってましたよ。「原発に反対する連中は電気を使うな」って。この無能な女に一回言ってやろうかって思ってるんですけどさ、一方通行ですよね。私みたいなのを呼べばいいんだけど、絶対呼びませんからね、ラジオもテレビも。真実を言う連中はみんなカット。ほどほどにうまいこと言ってる連中だけ、テレビやラジオに出るんですよ。いい加減な時代じゃないですか。すべてがいい加減。

 さあ、労働者の年間被曝線量は50ミリシーベルトです。僕は本気で被曝問題をやってる医者に尋ねたら、これは我慢線量でしかないんだって、労働者の。こんなの浴びつづけたら体がぼろぼろになりますよって言ってましたよ。なんでこんなに高い被曝を許してるんでしょう。ICRP、国際放射線防護委員会が20ミリシーベルトまで基準を下げてますよ。なんだ、これはいったい。日本は人殺し国家です。そう結論付けました私は。

 さあ、もうひとつ、2001年3月いっぱい、外国特派員協会で外国の特派員たちが僕の写真展をやってくれたんですよ。東京銀座のど真ん中にあるでしょ、有楽町の駅前にね。そこで講演したんですけど、これをいろんな新聞がよく書いてくれましたよ。とくによく書いてくれたのが、ロサンゼルスタイムスとスペインのエルムンドです。

 講演のとき、原発に入った時の写真もちゃんと持ってたんです。特集を組んでくれましたよ、両面で。これを、大阪で支援してくれる仲間たちが訳してくれました。

 講演に外国の記者は来てたのに、日本の記者は一人もきてませでしたね。わかりますね。余計なことに首をつっこんだら偉くなれない、どっかに飛ばされるのがオチだってことです。どうにもなりませんね。

(2005年7月2日 大阪市立生涯学習センターにて)

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