2010年10月2日土曜日

樋口健二氏講演「ヒバク~放射能の恐怖」(4)16歳の少年も原発で働いていた

さて、ついでだから、労働形態も知っておいてください。この前近代的な労働形態を。現代科学の粋を集めた原発で、いかに差別がひどいかということを知ってほしいんです。

 まず、原発というのは電力会社、その下に元請けがあって、これが日本の経済を根底から支えている東芝であり、日立であり、三菱重工、住友です。これが労働組合を作ったら連合になる。連合は原発を造れと言うんです。「原発をやめろなんてとんでもない、我々の生活はどうなるんだ」と言うんです。

日立の労働組合の委員長に会ったら驚きましたね。どこの会社の社長かと思いましたよ。「これからは原子力の時代だ」と平気で言う。「何を言ってるんだバカ野郎!」って思いましたよ。労働組合の委員長がそんなこと言ってるんですからね。組合が人を救うわけがない。

 原発労働者の日当も言っておきますね。約7万円です。今でも。7万円というのは原発が労働者一人当たりに払う額です。それをピンはねしてみんなで食い物にしてるんです。

 7万円とだけ聞くと、7万円ももらってるのかとみんな言うんですよ。ここで但し書きをつけないといけない。「そんなにもらってるならいいじゃないか」という人がいたんですから、東京で。「7万円なら仕方ないじゃないですか」って。

 でも、このお金は原発からでるだけのこと。原発に入るって言っても、ただ入るだけじゃないですから。いろんな道具を持って入る。それでいろんなとこを修理する。それが300カウントを越えるとみんな廃棄処分してしまう。これは大変ですよ。一日に道具を山ほど捨てなくちゃならない。その代金もみんな7万円に含まれている。

 元請けから下請けがありますね。ここから下が貧しい労働者です。元請けにだけ労働組合があるだけです。これが連合。連合は、元請けの人たちはできるだけ原発に入れませんと言ってます。危険なところには入れませんと。日立の労働組合の鈴木という委員長が言ったんだから間違いない。

 何のことはない。我々は入らないけれども、下の連中は入れと言ってるんです。「お前たちは被曝要員だから、死んでもらいましょう」と言ってるようなもんですよ。

 下請けがあり、孫請けがあり、ひ孫請けがあり、人出し業がある。この大阪にも人出し業の親方がたくさんいます。親方が原発に労働者を送れば、労働者一人につき3万円が下りてきます。これを親方が2万円ピンはねするんです。労働者には1万円しか渡してないんです。

 7万円出たって、下に行くにしたがってみんなピンはねしていくんです。これは何も原発に限ったことじゃない。日本の企業は全部これですよ。三菱自動車の欠陥隠しがあったでしょう。どこが泣いたと思います? 下請けですよ、下請け。おかしいですよね、日本っていうのは。文句を言いたくっても言えないんですよ。

 それはいけません、言いましょう、人間はみんな平等だって憲法にも謳ってるじゃないですかって。なのに、なんでこんな階級があるんだってことですよね。皆さんに知ってもらいたいのは、そういうことです。1億2000万人、皆、平等じゃありません。約6000万人は下請けなんですよ。これをこき使って踏みにじって生きているのが今の日本ですよ。僕はそうやって40年間写真を撮ってきましたけど、それは一向に変わっていません。

 この親方についてですが、福井だとか、福島だとか、地方へ行くと、ここの親方は周辺の農民を抱え込んでみんな原発に送り込むんですよ。3万円もらって2万円ピンはねすれば、御殿も建ちますよ。

 福井で建設中の原発御殿を見ましたよ。ここの親方に、無理矢理取材を申し込みましたよ。仮名を条件に取材をしましたけど、矛盾だらけのことを言ってましたが、よく正直に話してくれたと思いますよ。「うまい飯を食うにはどうしたらいいんだ? かっこいいことばっかり言っちゃいらんねぇや」って。人間の幸せって何だろうって考えちゃいますね。

 この親方連中の中に、暴力団がだいぶ入り込んでますね。この話をついでだからしときますね、忘れちゃいけないから。かつて、京都府の綾部市で暴力団が高校生のアルバイトを原発労働に使ってたってたんです。これも知っておいてください。原発に入れるのは法律で18歳以上ですよ。このときの三人はみんな18歳未満だったんです。一人は16歳、あとの二人は17歳。なんで入れたと思いますか?

 原発に入るにはちゃんと住民票をとらないといけない。暴力団もこういうことだけは頭がいいんですね。18歳の先輩の住所を書いたんですよ。それで幽霊みたいな存在になっちゃったわけですよ。この高校生が被曝しちゃったんですよ。一般労働者の5倍の被曝をして捨てられちゃった。

 彼らを暴力団が使ってたんですよ。で、なぜこの事件が発覚したかというと、彼らが休みの日に遊んでて保護されたんだすよね。「お前たち何やってるんだ」と聞いたら、「原発に行ってた」っていうんですよ。入域カードを持ってたんでしょうね。それで警察がその住所に電話したんですよ。そしたら、「うちの子は行ってませんよ」って返事が返ってくる。当たり前ですよね、先輩の住所使って入ってたんだから。

 こんなケースがあったんですね。ここだけの話かと思ったら北海道でもあったんですよ。学校の先生は何を教えてたんでしょうね。平和利用だけ教えてたんですよ。今でも同じことやってるんじゃないかって思ってますけどね。

 原発労働者は20代が圧倒的ですからね、皆さん。地方には仕事がないから。じゃあ、とにかく一日1万円もらえるからって原発に行っちゃう。

 去年の美浜原発の事故を思い出してください、みんな若い人たちでしたでしょ。一番上が46歳、次が41歳、31歳、29歳だったでしょ。彼らが最初にみんな死んで、あとからもう一人亡くなりましたが、亀窟さんでしたっけ、彼も30歳だったでしょ。みんな若年労働者ですよ、みんな。

 未来があると思いますか? 未来無し。これを許していったらどうなるでしょう? 原発をやめる頃にこの問題が噴き出しますかね? いまは噴き出さないでしょうね、お金が欲しいから。

(2005年7月2日 大阪市立生涯学習センターにて)

タグ:樋口健二 原発 被曝労働

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